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リスクに生きるには 171

<リスクに生きるには>

 

1.優良企業の仕方
   2019年度3月決算 売上高30兆2,256億円、営業利益2兆4,675億円。
  来期予測 売上高 0.7%減 30兆円、営業利益 3.3%増 2兆5,500億円。
  これは、どこの企業だと思われますか、
  お察しの通り、これはトヨタの業務実績と来期見積もりで、こんな数字を上
  げると「大企業は、いいよなあ。」の声が聞こえてきそうです。

  さらに羨ましい数字を列挙すると、資本金8,952億円に対して稼いで蓄積した
  利益剰余金が、資本金の25倍の21兆9,880億円もあることです。
  またさらに付け加えると、意外にも本業の他に金融での売り上げとそこから
  生じた利益で、売上高30兆円越えは金融収益が2兆円あってのことで、この
  金融事業の利益がなんと3,228億円もあることです。

  そんなトヨタの豊田章男社長が、この業績が実現できた要因は問われたとき、
  このように答えています「これもひとえに“すべての人達”が『コツコツ』
  と積み上げてきた『80年にわたる』結果だと思います。」  
  何気ない言葉ですが、事トヨタに関してはこの「“すべての人達”が示す意
  味合いと『80年にわたる』『コツコツ』」は結構重い言葉です。

  話は変わるのですが、
  トヨタの数字やコメントは、決算発表会の模様をインターネットより得たも
  のですが、そこで発表されるリアルなものから多くを知ることができました。
  ソフトバンクの決算発表会も合わせて見たのですが、
  孫さんのコメントからも、多くのことが読み取れます。
  ここで、ふと思ったのはインターネットのこの便利さと時代的影響です。

  孫さんは、決算発表会で株価時価総額にかなり強い思いを込めてコメントし
  ていたのですが、世界のランキングにおいてトップ10中なんと7社がIT
  関連企業であり、その経緯を成長率で絵解きしていたのです。
  過去25年において、まず自動車産業について10倍、機械工業は20倍で、
  インターネット産業はなんと1,000倍であることを示したのです。
  
  1,000倍というのは、とてつもない成長率です。
  だからこそ、株価時価総額世界ランキング、トップ10社中7社であること。
  今という時代、経済成長のけん引の中心がIT産業だと言われ、さらに今後
  そのなかでも“AI”が主役であると述べられたのです。
  そして、高成長を得ようとするならこここそが焦点だとも言われるのです。

  孫さんの説明を聞くとすごくイメージしやすく、だから先端の知見を開くた
  めには「動画」で見聞されるのも良いのかなとおススメもします。
  孫さんによると“AI”は“推論”であると定義され、将棋のソフトがプロ
  棋士を負かすように「ビッグデータから得られる“推論”」は人間の能力を
  凌ぐもので、優良企業での競争の新たな鍵の一つであるとも言われます。 

  さらに孫さんの話を続けますが、
  孫さんが事業において目指しているのは、1,000倍の成長をしているIT産業
  それも「AI分野」というまさに「時代の中核」への投資であって。
  孫さんの率いる「ソフトバンク・グループ」は「ビジョン・ファンド(投資
  会社)」で、育ち盛りのAI企業の成長・促進させようとするものです。

  決算発表会の説明による「孫の2乗の兵法」の実践であることが窺えました。
  「敵を知り己を知れば百戦して危なからず。」で、ベンチャー企業の弱点が
  “金融”と“マネジメント”であることを見越してのことのようです。  
  ソフトバンク・グループが持ち得る「コア・コンピタンス(中核の強み)」
  である“資金”と“ネットワーク”をフルに活かそうとしています。

  その投資先は“AI”という戦略技術を用いるそれぞれの分野において「ナ
  ンバー・ワン」と見なされる「ベンチャー企業」群であり。
  現段階では42社にのぼるのですが、その成長力は爆発的なものが期待され
  最悪9割がコケてもそのリターンは莫大であると予想されるのです。
  これは、孫さんが言うところ「群戦略」に沿ったものとなるようです。
  
  ここで長々と孫さんを割り込ませたのは、
  トヨタの豊田章男さんが感じている100年に1度の変革の時代の片りんと
  企業が成長するための焦点および変革するべき経営スタイルについて、その
  凡そ伝え知ってもらいたかったからです。

 

2.変革の基本戦略
  ホンダの決算報告会も見ました。
  「The Power Of Dream」のホンダにしては“Dream”についてのコメントはな
  くて、国会答弁のようで味気なさすら感じられました。
  業績が芳しくないのはその性なのか「コア・コンピタンス」である“夢”や
  “革新の意地”がなくならないようにと思ってしまいました。
  
  引き換えて、決算発表会でのトヨタの豊田章男さんから醸し出される雰囲気
  とコメントには、本来の“リアルの強み”に加えて“夢”や“革新の意地”
  も語られて好業績の背景が伝わってきました。
  「TPS方式」による原価低減の軸を強化しながら、大変革期に追随し「モ
  ビリティー・カンパニー」に大変身しようとする力強さを感じさせました。   
  
  そんな発表会の中で「今一番恐れることは何か。」と問われたときに、
  それを「『トヨタは大丈夫だと思う気持ち』が危険で、この危険な言動が危
  機に陥れる。」だから「価値観の向上が必要で、何故そんなに危機感をあお
  るのかとよく言われるのですが、これを続けて行きたい。」と話され。
  「37万人すべてが、当事者意識を持つこと。」の必要性を訴えていました。
  
  また「今まで、一番『揺さぶられた』のはいつか。」と聞かれた時に、
  社長就任後すぐに「アメリカの公聴会」によばれたこと、決算が赤字であっ
  たことからはじまり「毎日々々必死で生き抜いてった結果、今日がある。毎
  日が『ハラハラドキドキ』である。」と明かされています。
  けれど「意思もって、あきらめずにコツコツやる他ない。」としています。

  その目指すところは「モビリティー・サービス・カンパニー(移動体の利便
  性をトータルに提供する企業)」だとし、
  「持続的な成長」「競争力の強化」をはかるためには「『過去の成功モデル』
  に頼っていては未来はない。」として、優良企業との枠を超えて「仲間づく
  り」のために「選ばれる企業にならなければならない」としているのです。
  
  ITの寵児でもある孫さんが、変革について語るのは当然なのですが、
  堅実であるとするトヨタの豊田章男さんが「変革しなければ生き残れない」
  と断言し実行していることに、
  アルビン・トフラーの言う第三の波「脱産業社会」ドラッガーの言う「ポス
  トモダン」の質的に大変革する時代の真っ只中にいる現実を知らされます。


  そこでドラッガーが、これについてどのような構想を持っているのか見ます。
  「未来は、望むだけでは起こらない。そのためには、意思決定しなければな
  らない。いま行動し、リスクを冒さなければならない。必要なものは、長期
  計画ではなく“戦略計画”である。」「戦略計画は思考であり、資源を行動
  に結びつけるものである。」「それは手法ではなく、責任である。」

  戦略計画でリスクを避けうることができるのか、
  これについて「戦略計画はリスクをなくすためのものではなく、最小にする
  ものでもない。現在の資源を未来に、不確実な期待に賭けることである。経
  済活動の本質とは、リスクを冒すことである。」
  「得るべき成果と比較して冒すべきべきリスクというものが必ずある。」

  「『戦略計画に成功』するということは、より大きなリスクを負担できるよ
  うにすることである。『より大きなリスクを負担できるようにすること』こ
  そ、起業家としての『成果を向上させる唯一の方法』である。」
  したがって「『今日この仕事のために、最高の部下のうち誰を任命するか』
  を問うことが不可欠である。」
  
  “リスク”は絶えずあるものなので避けて通れない、それは同時に企業を成
  長・発展される“機会”を提供するものでもあるとしています。
  “リスク”を“危険”とせず“機会”にするためには、リスクを“マネジメ
  ント”することが必要であるともいいます。
  必要なのは、強い“意志”と十分な“資金手当”と最高の“人材”です。
  
  そのマネジメントのあり方について、ドラッガーは「イノベーションには、
  既存事業のための尺度、予算、支出とは別のものが必要になる。」と言い。

  「既存事業について発する問いは『この活動は必要か』で、答えが『必要で
  ある』ならば、次に発すべき問いは『必要最小限の支援はどれだけか』。
  対しイノベーションについて発すべき重要な問いは『これは正しい機会か』
  で、答えが『しかり』であるならば、次の問いは『この段階において、注ぎ
  込むことのできる最大限の優れた人材と資源はどれだけであるかである。』」

  豊田章男さんが「毎日、ハラハラドキドキ」と言われる気持ちが理解できそ
  うで、そうであるからこそ『持続的成長』と『競争力強化』を実現できるの
  だとも思うのです。
  「することは、命をかけた難事」で「しないことは、死につながる苦境」で、
  つくづくと企業経営は一か八か楽しむより仕方ないようにも思われるのです。

  経営は、誰にとっても「楽なものでない」のは確かで、けれど「誰にとって
  もそうである」ので経営者なら腹をくくるべきです。
  だから条件が同じな未来に「リスクをかけて」知恵と気力を振り絞って失敗
  を経験して賢くなりながら力をつけながら、充実感をもってあなたの使命を
  果たすのなら、これこそが「有力なあなた」を創り上げるでしょう。