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分からなければ扉は開かれません  164

 <分からなければ扉は開かれません>

 

1.よき目標はよき定義から             
  有能な経営者の方たちが、これを知らないがために「成果を実現させる道」
  を閉ざしてしまうという思わぬ“マネジメントの摂理”があります。
  それは正しく「事業の定義」を行なうということで、これを間違えると情
  熱と実行力は生かされず、失敗していますとすべてが空回りの苦難ばかりと
  なり「成果が実現される」ことはありません。

  しばらく、読みにくい話が続きますが最後までお付き合いください。

  またドラッガーですが、こんなことを言っています。
  「事業の定義は『目標に具体化』しなければならない。いかによくできた
  定義であっても、そのままでは優れた洞察、よき意図に過ぎない。」と。
  そのことは裏を返えすのですが、よくできた「事業の定義」があることが
  「目標を具体化」するための絶対条件であるとなります。

  前回は、目標なき経営の非効率さについて述べました。
  その「目標を設定」されるについて、その根底である「事業の定義」がき
  っちりとなされていることが大前提であることをご理解ください。

  前に示した、松下幸之助さんの例にしたがって言うならば、
  パナソニックの「事業の定義」つまり理念「事業を通じて世界中の皆様の
  『くらし』の向上と社会の発展に貢献する」「産業人の使命は貧乏の克服
  である。この世に楽土を建設する。」があり、そのような「事業の定義」
  「理念」があってこそ、その時々の「目標」が効力を持ったのです。

  少し補足します。
  「理念」と「事業の定義」の関係ですが、
  「理念」とは「事業の定義」を分かりやすく「言語化」したものです。

  分かりにくいので、
  孫さんの「ソフトバンク」のそれを見ると「情報革命で人々を幸せに」と
  あり、やや理解しやすくなったのではと思いますが。
  
  いつもそうなのですが「ドラッガーの言葉」は、事業を行うについての基
  本を示してくれ、これを紐解いた人には多大な恩恵をもたらしてくれるの
  ですが、予備知識なくしては分からないという難点があります。
  そこで回りくどいのですが「事業の定義」について、原点にもどり「おさ
    らい」をしたいと思うのです。

  なぜ「定義が必要なのか」それは「あらゆる組織おいて、共通のものの見
  方、理解、方向付け、努力を実現するには『われわれの事業は何か、何で
  あるべきか』を定義することは不可欠である。」ためで、
  「それを知ることほど、分かり切ったことはないと思っているが、ほとん
  どの場合、わかりきった答えが正しいことはほとんどない。」

  意外なことを言っています。
  そこのところの理解ができなければ「事業の定義」のあり様が分からない
  ので、よくよく考えて行きます。

  ホンダの場合の「ホンダ“ジェット”」の製造について、
  「ホンダは、みなさまへ“自由な移動の喜び”を提供することに挑み続け
  ています。クルマやバイクそして船外機など、陸や海を舞台にさまざまな
  製品を創造するなかで空を自由に移動できる『モビリティ(空間的移動)』
  の提供は、創業当初からの夢でした。」とあります。

  ホンダは、自身の事業を「自動車製造業」とのみ“定義”していなのです。
  ホンダは、自身の事業を「モビリティ(空間的移動)業」と定義しており、
  だから「“狭い意味”の自動車」が「モビリティ(空間的移動)」として
  時代にそぐわなくなったら、時代に則して転換させる用意があるのです。
  このことは、他の自動車メーカーと一線を劃していると言えそうです。

  本田さんは『モビリティ(空間的移動)』は「人間の根本的な利便を適え
  るもの」であり永遠になくなることはないとされています。

  少し飛躍して喩をあげると、江戸時代の駕籠(かご)屋があります。
  その駕籠屋が、自身を「駕籠でのみ人を運んでゆく」のだとしたら明治期
  にその仕事は廃れ、ではなくて人を運ぶことだとしたら「人力車」を採用
  でき、それも時代に合わなければ「自動車」で事業を継続させます。
  もし「人力車」に拘るなら「観光地の案内役」とすれば再生できます。

  さらに言うと、
  「炭」を「家庭の燃料」として「定義」するならばもはや出番はなく、
  焼き鳥屋などで「食材をおいしく焼く燃料」や「脱臭剤の原料」としたな
  ら、つまり「新たな人を幸せにする」“定義”を見つけたなら蘇ります。
  ここにこそ「わかりきった答えが、正しいことはほとんどない。」とする
  「事業の定義」の本質があります。

  このことに気付いた経営者が、日本では「松下幸之助さん」であり「稲盛
  和夫さん」であり「ホンダの本田宗一郎さん」ら、
  その他に超優良企業の経営者の中に少なからずいます。
    
  「事業を定義」するとき、いつも原点となるのは「その事業が、顧客の幸
  せのためにどんな“効用”を実現させているか」ということで。
  もし「顧客への幸せ貢献」ができなくなったら「事業の定義」についてあ
  らたに問い直すことが必要で、それに失敗すると「事業は失敗」します。
  これは厳粛な現実で「事業の定義」の錯誤は「企業の存続」を断ちます。

  ドラッガーは、このように言っています。
  「企業の目的としての事業が十分に検討されていないことが、企業の挫折
  や失敗の最大の原因である。逆に、成功を収めている企業の成功は『われ
  われの事業は何か』を問い。その問いに対する答えを考え、明確にするこ
  によってもたらされている。」「『われわれの事業は何か』を問うことこ
  そ、トップマネジメントの責任である。」と言うのです。

  繰り返しますが「『事業の定義』を間違えると、企業は挫折し失敗する」
  よくよくここのところの“意味”と“意義”をお考えてください。
  難解ですが、これが基本であり“成果の成否”を分ける分岐点となります。

  蛇足で続けます。
  企業を考えている人また事業が行きづまった経営者の方、
  「事業の定義」を行うについて、行うべきは「今日の財やサービスで満た
  されていない欲求は何か」を問うことが基本で、その上で「孫さん」では
  ないのですが「×××で、私たちのお客さんを幸せに」とすれば、少しは
  焦点の定まった「事業定義」つまり「理念」が形づくられます。

 

 

2.「 “真”なる定義」で蘇る 
  スティーブジョブズは、自身の行う事業を「最高の性能のパソコン(ハー
  ド)をつくり出す」ことだとしていったんは大成功をおさめました。
  しかし、それは行き詰まり「コンピュータを使って『感動』を巻き起こす
  ことなのだ」と「事業の定義」を変換させたことによって、人々の生活ス
  タイルをも変革させてしまう“大きな成果”を実現させました。

  たまたま見たテレビ番組「カンブリア宮殿」に、
  「事業の定義」を正しく知ることで、株式市場上場まではたした「グルメ
  系回転ずし 銚子丸」のことが紹介されていました。  
  この企業の成功は、事業意欲に燃える経営者夫婦が、あるべき「事業の定
  義」に出会ったことが大きなターニングポイントとなりました。

  因みに「グルメ回転ずし銚子丸」の現状は、首都圏に集中して87店舗を
  出店させ、売上は188億円。
  そして多くの「顧客満足度 No.1」の評価を獲得しています。

  この「グルメ回転ずし銚子丸」の沿革を振り返ります。

  <ただただ夢中で創業>
  最初に手がけた事業は、13坪の「おもちゃ屋」で6年間必死に資金を貯
  めて実現させたもので1977年のことでした。
  けれど夫と妻の「一国一城の主になる」「小さなお店を持ちたい」の思い
  が相まってのものでしたが「事業の定義」などはもとよりなく“行き当た
  りばったり”の経営で、1年半で廃業する仕儀となりました。

  <考えずに「事業の定義」を行った>
  次に活路を見出そうと模索する中で思い至ったのが「持ち帰り寿司店」で、
  おりからの外食ブームの中でテイクアウトが人気をよび、当時高級イメー
  ジがあった「寿司」が手頃な価格で手軽に買えるとあって大評判となり、
  とにもかくにもよく売れまくったそうです。
  そこで1年間に5店舗ずつ出店で、これを始めたのは1979年のことでした。

  そこから経営者が当たり前に持ってしまった「事業の定義」は、例にもれ
  ないよくあるところの「もっと売り上げを伸ばす」というものでした。
  その「事業定義」にしたがって、当たるを幸いとして「中華店」「回転寿
  司」「とんかつ屋」「ラーメン店」など、そればかりでなく「不動産業」
  「学習塾」などにまで従業員は500人を数えるまでになったそうです。

  「今日の財やサービスで満たされていな欲求」を嗅ぎとっての事業は大成
  功だったのですが、ここには「経営の智恵」はありませんでした。
  そんな状態の中で経営者夫婦は事業の整理がつかず「いろいろの事業を抱
  えているのが嫌だった」の心境になり、管理も行えず「料理やサービスの
  質」も落ちて経営悪化が相次いで一店々々と閉店させて行きました。

  <あるべき「事業の定義」を悟った>
  1997年、そんな中でどうすれば「売る上げを伸ばすことができるのか」の
  ヒントを求めてチェーンビジネスの本場であるアメリカにむかいました。
  そこで訪れたハンバーガーショップのオーナーにぶつけた質問は「売上の
  上げる経営のポイントはどこにあるんですか」というものでした。

  その時に受けた指摘は、考えていたものとは違い意外なものでした。
  「売上を上げるのは二の次だよ。経営はまず“理念”を明確にすることだ」
  この言葉を聞いて、よくよく考えたことで後の繁栄が約束されたのでした。

  ※因みに、このハンバーガーショップは「マクドナルド」だと思われます。
  マクドナルドの「事業の定義(ミッション)」は「『お気に入りの食事の
  場とスタイルであり続けること』で『QSC&V(Quality品質,Serviceサービ
  ス,Cleanliness清潔さ,Value価値)をレストラン・ビジネスの“理念”
  とし』そのミッションを達成します。」とあります。  
  
  そのような経緯で、私たちの「事業の定義」つまり「理念は、何なのか。
  何であるべきか」を考えて、やがてたどり得たのが、
  「『お客さまに感謝と喜びを頂く』ことである。」でした。
    
  翌年、業態を「回転寿司」それも「どこにもない回転寿司」に絞り、目標
  を「新しい寿司文化をつくろう」としていろいろの変革を実施しました。
  具体的には「新鮮な魚を直接仕入れて、それをお客様なの前で握る。」
  そこから「劇場型グルメ回転寿司 銚子丸一座」の「座長」もいる「女将」
  もいる「おもてなしとパフォーマンス」営業の開演が始まります。

  「寿司ネタ」は“銚子港”から、主に直接仕入れて調達しています。
  
  「事業の定義」において最も基本とならないければならないのは、
  「マーケティング」「顧客満足」を、より強力に実現されるように「定義」
  するということで、これなくしては「成果の実現」はおぼつきません。
  これがなければ「社員」は「何をすればよいか分からず、また意欲もわか
  ず」一時時流に乗ったとしても、その継続は困難なものとなります。
  
  その後どうなったのか、大繁盛となりました。

  ただ、好事魔多しで絶頂期に夫である経営者は癌に蝕まれました。  
  死を覚悟した創業者は、二代目社長として外部から適切な人材を抜擢する
  ことにしたのでした。
  ※余談になるのですが後継社長に選んだ基準は夫婦とも「誠実」であるこ
  ということで、まったく畑違いの経営経験者を選びました。

  その後継者に先代社長が、特に強く託した言葉ありました。
  「寿司は売ろうとしないでいい。“理念”を売ってほしい。」でした。
  つまり『お客さまに感謝と喜びを頂く』をどこまでも追求するということ。
  「寿司店を繁盛させる」ことが目的では手段で、
  「事業の定義」したものを行うことを、後継者に託したのでした。

  さらに少し余談を入れます。
  カンブリア宮殿の司会者の村上龍が、創業者の一人である妻に「起業で最
  も大切なことは」と質問した時、
  「“情熱”と“好奇心”、それがあれば何でもできる。」しばらく置いて
  「そして“行動”頭だけではダメ。思ったらやってみる」と答えています。