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転ばぬ先の“智恵” No.173

<転ばぬ先の“智恵”>

 

1.経営者のの真義

「晩節を汚すことがなく、後継者育成をも成功させる経営者になる」に
 はどうしたらよいのか、そこには一つの共通要件があります。
 それは、ユニクロの柳井さんがもらした「夢に生きないといけんないじ
 ゃない。」「人間いつ死ぬか分からない。」にあらわされる「人間観」
 や「死生観」にまで至る「価値観」なのです。

 ところで、多くの起業家が事を始めるに際して夢見るのは、何としても
 勝とうとか大金持ちになろうとかの自我欲望の充足のようです。
 晩節を汚すことのなかった経営者も、多かれ少なかれここから始まるの
 ですが、必ず起こる蹉跌の後に「オレが、オレが」が昇華されて高次元
 の“知恵”でもって脱皮して羽化されているようなのです。

 いつもいつもそうなのですが、そこには苦難や失敗を多く経験できた人
 しか得ることのできないハタとした気付きがあります。
 それはあるべき価値観を持てるかどうかなので、それがなければ“智恵”
 は“方略”へと歪み、一時の成功はあるものの大きくて豊かな成功は得
 られず晩節を汚すことにもなりかねません。

 事業を行うにおいて、どのようにすればどのように成果に至れるのかま
 たどんな人が一番可能なのでしょうか、
 それは苦難を経験した人が、ベストプラクティスつまり晩節を汚すこと
 がなかった経営者の“知恵”の真髄を我が物とすることで。
 もし未経験者ならば、そのことを察することから始まるのです。

 すべては“知恵”です、それは“知識”なのではまったくありません。
 「強く意思する人」ならば、そこが鍵になります。
 「意思を持たない人」ならば、誰しもに襲ってくる苦い経験の後で救わ
 れる手立がこのことを置いてないことを悟られることです。
 「マネジメントと」は、社会人がよりよく生きるための「手立て」。

 この「マネジメント」について「ドラッガー」が多くの示唆を行ってい
 ますが、未だ充分の解き明かされていないと言います。
 ために「晩節を汚さなかった経営者の“考え方の真髄”や“行動様式”」
 を探って行くことが懸命な方法のようです。
 松下幸之助さんや稲盛さんも、そのためか多くを語られています。
 

 少し突拍子もない引用ですが

 高野山真言宗のホーム・ペ-ジを見ていました。
 すると“戒律(仏教での守らなければならない規律)”について、
 「お大師さま(弘法大師)の言葉には『戒をたもつ(持戒)』という言
 い方はありますが『戒を守る(守戒)』という言い方はありません。戒
 はほとけのこころを表現したものなのです。」とあり、

 「決まりごとのように盲目的にただ守ろうとするのではなく、自らのこ
 ころにほとけと同じ性質のものがあることに気がついて、その状態を持
 することが大切なのです。自分自身のこころがどうであるかが大切なと
 ころです。戒の実践とは、自分のなかに確かにある“ほとけさま”を育
 むことなのです。」と続けられていました。

 これが『即身成仏』のはじめの修行だと思われるのですが。
 超優良企業(エクセレント・カンパニー)にも、その企業をそうならし
 めたところの『企業こころ』があるのも然りです。
 GEのジャックウェルチが、経営の究極の目標は「よき企業文化」の構築
 だというように、経営者にはそのための“知恵”が求められるのです。

 ここから、少し難解だとは思うのですが、
 企業の現在、未来の帰趨に関わる重要度なものなので、またドラッガー
 の述べるところを挟みます。

 「支援活動には、まず“良識活動”がある。組織にとって卓越すること
 が必須とされている分野において、基準を設定し、ビジョンを描く活動
 である。いかなる組織といえども、ビジョン、価値、基準、監査を必要
 とする。この活動に携わる者は、一人であることが望ましい。それはマ
 ネジャーのなかで尊敬されている者が行うべき仕事である。」

 ※良識活動とは分かりにくい言葉ですが、トップマネジメントの活動で、
 コンセプト(使命、経営理念)、バリュー(行動規範)、ビジョン(経
 営方針、経営戦略)等によって行われる価値活動のことと解します。
 この良識活動が行われない企業では、よき企業文化は育まれず、ゆえに
 「コア・コンピタンス(核となる企業の強み)も生まれません。

 「この活動は、企業の成功と存続に中心的かつ致命的な意味を持つ限ら
 れた分野においてのみ行わなければならない。人事はこの活動の対象に
 しなければならない。マーケティングもしかりである。環境に対する影
 響、社会的責任にかかわる問題、地域社会との環境も対象になる。イノ
 ベーションと名のつくものも、すべて良識活動の対象になる。」

 さらにトップマネジメントの役割ついては、このように述べています。

 1.「トップマネジメントには、事業の目的を考えるという役割がある。
 『われわれの事業は何か、何であるべきか』を考えなければならない。
 この役割から、目標の設定、戦略計画の作成、明日のための意思決定と
 いう役割が派生する。」

 2.「基準を設定する役割、組織全体の規範を定める役割である。
 目的と実績との違いに取り組まなければならない。主たる活動分野にお
 いて、ビジョンと価値基準を設定しなければならない。」

 3.「組織をつくりあげ、それを維持する役割がある。
 明日のための人材、特に明日のためのトップマネジメントを育成し、組
 織の精神をつくりあげねばならない。トップマネジメントの行動、価値
 観、信条は、組織にとっての基準になり、組織全体の精神を決める。
 加えて、組織構造を設計しなければならない。」

 さらに4.「渉外の仕事」、5.儀礼的な役割」
 そして6.「重大な危機に際して、自ら出動する役割」としています。

 こんなことも言っています「『トップマネジメントの役割が多様な能力
 と性格を要求している。』という事実が『トップマネジメントのすべて
 を“複数の人間”に割り当てる』ことを必須にする。」
 けれど「価値観」や「最終意思決定」を行うのは最高責任者であります。

 

2.マネジメントの三密

また、よもやま話になります。

 真言密教の空海が修し会得した秘法に「虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐ
 もんじほう)」というものがあります。
 一定の作法に則って“真言”を百日間かけて百万回唱えるというもので、
 これを修した行者は、あらゆる経典を記憶し、理解して忘れる事がなく
 なるというものです。

 突飛な飛躍になるのですが、マネジメントにおいてもこんな“真言”は
 ないものかと考えたのです。
 これを日夜思い続けたら成果があらわれるという“真言”なのですが、
 そこで思い至ったのが、マネジメントの重要な基本の「マーケティング」
 と「イノベーション」という二つ“真言”なのです。

 さらに、マニアックに真言密教の話をすすめて行きます。
 「身密、口密、意密の“身口意の三密”」というものがあります。
 「身に印(いん)を結び、口に真言を唱え、意(こころ)に本尊『大日如来』
 を念じ修するとする、ここにおいて修して至りて『如来』に感応すれば
 すなわち『即身成仏』をなす」というものです。

 経営者も「『マーケティング』と『イノベーション』このマネジメント
 の“身口意の三密”を行ずるならば『大経営者』となれり」と思うしだ
 いなのですが、どうでしょうか。
 そのために「意密」つまり「マーケティング」と「イノベーション」の
 「真義」について「ほとけ心」のもとに解きほぐしたいと思うのです。

 弘法大師様にならい、こんなことを考えるのです。

 <マーケティングの秘儀について>
 「マーケティング」の“意”とは「相手の心や様を慮って、満たされぬ
 その欲求を満たす」こと、やわらかく言うと「喜んでもらう」ことで。
 「マーケティング」の主な対象は“顧客”とそして“従業員”というこ
 とになりますが、ここでの秘事は「従業員が物心両面で喜んで、懸命と
 賢明をつくしたならば『顧客喜び』」即「名経営者をなす」です。
 
 <イノベーションの秘儀について>
 「マーケティング」は常に陳腐化する運命を持っている。
 然るがために新たな芽を吹く「より良きもの」「一番のもの」「未だ世
 になきもの」をと日々「革新」の“機会”を持ち得る。
 秘事は、すべての人の潜在する能力を引き出して、すべての人に『新た
 な“幸せ”を実現させる』ならば即「常なる名経営者をなす」です。

 トップマネジメントとしては、
 「価値観の共有」「運命共同体意識」「継続学習」「自己目標管理及び
 評価」などの“喜びの機会と環境”で支援することとなります。

 このように意味付けてみると、何人かの経営者の名前が浮かんできます。
 松下幸之助さんは、貪欲な“聴き上手”で「熱意は誰にも負けないと」
 と自負しながら、一方「自分には知識がない」として誰彼かまわず意見
 を求めて、その意見とそれを言った者を積極的に重用しました。
 それを『衆知を集めた経営』として“強み”の根源にされていました。


 パナソニック4代目社長の「谷井昭雄さん」が松下幸之助さんの出会っ
 た時のエピソードが「PHPオンラインシュウチ」で紹介されていました。

 谷井さんが開発していたのはテープレコーダーだったのですが、まだ試
 作段階だったバラックみたいな外見のテープレコーダーだったのですが、
 それを幸之助さんに見せに行きました。
 試作機を見て「いいのができたな」とニコニコしながら、わが子をかわ
 いがるように手で触れて、持って、動かしておられたそうです。

 ※松下さんは時に激しく叱責することもあったそうなのですが、本然的
 には心細やかな“褒め上手”だったそうです。

 このとき、言われた言葉が「きみ、商品を抱いて寝たことがあるか」と、
 もう1つ「今はどこの会社や工場でもよい商品をつくろうとして、品質
 管理を一生懸命に勉強している。でも、それよりもっと大事なのは、き
 み、人質〈じんしつ〉管理やで」と。
 「電気製品をつくる前に“人をつくる”」会社のこれこそ真骨頂です。
 
 谷井さんは、折に触れて幸之助さんが掲げられていた言葉「“素直な心”
 は、あなたを強く正しく聡明にいたします」を思い出されるそうです。
 思うに、この『素直な心』は自戒の言葉で、これこそが松下幸之助さん
 を「経営の神様」になしめた「真言」だったようです。
 ただ、余人には解き難き「真言」であることは否めませんが。

 余計な解説やもしれませんが。

 “素直な心”でもって観れば「顧客喜び、つくる人歓ぶ」つまり『すべ
 て人の“幸せ”』こそが商売繁盛の本質であり真髄と知れるでしょう。
 「顧客喜ばせ活動“マーケティング”、より良き喜ばせる革新活動“イ
 ノベーション”」それを引き起こす「従業員への物心両面の喜ばせ活動」
 これらこそが“素直な心”から生まれるところの『功徳』と言えます。