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顧客創造戦略 170

『顧客創造戦略』

 

1.企業の目的
  ドラッガーの基本をおさらいしながら、話をすすめます。
  「企業とは何かを知るためには、企業の目的から考えなければならない。企
  業の目的は、それぞれの企業の外にある。それは“顧客を創造”することで
  ある。」「企業は、すでに欲求を感じられているところへ、その欲求を満足
  させる手段を提供する。」「潜在欲求を、有効需要に変えられて初めて“顧
  客”と“市場”が誕生する。」 これが、基盤です。

  あいかわらずの固い言葉ですが、日本での代表的事例としては、
  江戸時代、このことを実践して今に続く大を成した「三井」があります。
  その起こりは1673年(延宝元年)「越後屋呉服店」を江戸本町一丁目に創業
  で、さらに駿河町へ営業を拡大させ、当時旺盛だった町人の未だ満たされざ
  る“呉服への欲求”を顕在化させて“顧客”と“市場”を誕生させました。 
  いろいろな革新的アイディアの実践で、潜在欲求を顕在化させたのです。
   

  「企業とは何かを決めるのは顧客だけである。なぜなら顧客だけが、財やサ
  ービスに対する支払いの意思を持ち、価値を認めて購入するからである。
  しかも顧客が価値を認め購入するものは、財やサービスそのものではない。
  財やサービスによってもたらされるもの“効用”である。」
  「顧客の欲求を満足させる“効用”づくり」が、企業の目的です。

  もう少し、付け加えます。
  『企業の目的は“顧客の創造(効用づくり)”である。』
  「したがって企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それが、
  “マーケティング”と“イノベーション”である。マーケティング(顧客の
  満足活動)とイノベーション(新たな更なる満足をもたらす革新活動)だけ
  が“成果”をもたらす。」 これが基本の概念でここから始めます。

  また「越後屋呉服店」に話を戻しますが、
  その行ったイノベーションが当時としては画期的で、それまでなかった店頭
  売りを始め、割高であった掛け売を正札(定価)に、さらに一反単位でしか
  買えなかったものを切り売りにと通例だとされた販売方式を覆しました。
  次々と打ち出して、一挙に大きな市場となる“町人の欲求”を満たしました。

  イノベーションの機能は時代を超えるもので、これが“普遍原則”です。
  デザイン性の強いオシャレ着「フリース」をリーズナブルな価格で提供して
  若者や家族層の心をつかんだ「ユニクロ」や、
  どこにいても、オンラインショッピングでセンスあるアパレル商品を購入で
  きるようにした「ZOZOTOWN」など皆“顧客の創造”の代表事例です。

  ユニクロについてみてみると、衣類には「人体の保護」という一次“効用”
  に加え、装飾や社会的地位の表象という二次“効用”等があります。
  この二つの効用を加味した「ヒートテック」「エアリズム」「ウルトラライ
  トダウンジャケット」、さらに「ワイヤレスブラ」と商品開発を多様に展開
  して行きご存じの通りの“顧客創造”を連続させています。

  行うのは誰か、それは言うまでもなく企業が繁栄させるのはまた存続を可能
  にするため“マーケティング”と“イノベーション”機能を勇気をもって信
  念を持って“知恵”をふり絞って考え抜き実現させる“人材”となります。
  それは“専門家”とその専門家を導き活性化させるのが“リーダー”とそし
  てそれらを総括的に支援する“トップマネジメント”となります。

 

2.マーケティングの目標

  しばらく、ドラッガーの言葉を列挙します。
  「事業(目的)の定義は、目標に具体化しなければならない。」
  「目標設定においても、中心となるのは“マーケティング”と“イノベーシ
  ョン”である。なぜなら、顧客が代価を支払うのは、この分野のおける“成
  果”と“貢献”に対してだからである。」
  
  マーケティングとは「顧客活動」です。
  すべては「私たちの顧客は誰か」そして「顧客の欲求は何か」に始まります。
  よくある「儲けたい」から始めると、たまたまの当たりがあるものの、マー
  ケティングに秀でた競合者があらわれるとそこまでの定めです。
  “運命”が頼れる唯一の味方というのでは、主体的な事業だとは言えません。

  これを理解できるのと、理解できないのとでは大いに成果が異なります。
  そのマーケティングについて「いろいろな目標の設定を行わなければならな
  いが、まず行わなければならない前提がある。」と言いいます。
  「マーケティングの目標について、二つの基本的な意思決定を設定をしなけ
  ればならない。それは『集中の目標』と『市場地位の目標』である。」  
  
  “集中”と“市場地位”について、
  「集中の目標は、基本中の基本と言うべき重大な意思決定である。集中の目
  標があって初めて『われわれの事業は何か』との対する答えも、意味のある
  行動に変えることができる。」  
  「市場シェアの小さな企業は、やがて限界的かつ脆弱な存在となる。そうな
  るということは、長期的に見たとき企業の存続にとって極めて危険である。」
  
  “集中”と“市場地位”ですが、この二つには密接な相関関係があり。
  “市場地位”は、存続のための絶対条件で、ここから戦略構想が始まります。
  どの市場をターゲットにするのかなのですが、GEが「ナンバー1、ナンバ
  ー2」の事業を選択してそこに“集中”したのはそれがためです。
  それほど基盤となる戦略で、強みの持てるターゲットに“集中”するのです。
  
  「ダイソン」の戦略よりこれを考えたいのですが、
  事の起こりは、紙パック式掃除機の欠陥「紙パック満杯になっていなくても
  吸引力が落ちる。」を解消しようとするもので「デュアルサイクロン方式」
  を発想・開発したことで「紙パックがいらず」「吸引力が落ちない」という
  “効用”に“事業集中”して高い“市場地位”を構築できたと言えます。

  「ユニクロ」についての“集中”と“市場地位”を考察します。
  一見すると多くを扱っており“集中”していないかの印象を受けます。
  ところが、よく観てみるとそこには普遍的な“強み”となる「満足していな
  い顧客欲求」にスピーディーに応える商品企画(開発)戦略があります。
  「満足していない“欲求”」を見つけることに“集中”している。

  それこそが『顧客創造戦略』だと言えそうで“セオリー”通りで、  

  「有明新オフィス」開設に際して、柳井さんの肝いりで設置した施設があり、
  それが「カスタマーセンター」で精鋭11人を配置して“集中”して「顧客の
  声」を聞き取り対応することで“商品力”の向上を目指しました。
  これは基本中の基本のことで「すでに欲求を感じられているところへ、その
  欲求を満足させる手段を提供する。」ための、一手であります。 

  シンプルと言えば、これほどシンプルなことはないのですが、
  避けたいことである「クレーム」「要望」を反転させて「顧客の満たされざ
  る欲求」を知るための絶好の“情報の源”とする。
  顧客本人が吐露する“本音の声”に勝る情報など他にないと言えます。
  「聴く企業」と「聴かない企業」 本道はどちらにあるかは歴然です。
 
  「企業とは何かを決めるのは顧客だけである。なぜなら顧客だけが、財やサ
  ービスに対する支払いの意思を持ち、価値を認めて購入するからである。」

  聴けたらどうするのか、スピーディーに反応しなければ意味はないので、
  この場合においてそれを実現するのは誰か、
  「従業員(専門家)」とそれらの従業員に活力を与える「リーダー」で、
  そこで、過去の知識だけの現場を知らない管理者が稟議のために見当はずれ
  の判断を挟んでしまっては「顧客創造」など適うはずはないので。

  「トップマネジメント」がしなければならないのは、
  現場が自主的に活き活き活動できるようにすることで、
  「基本方針(目的)」「全体目標」「それぞれの目標」「守るべき価値観」
  を明確にしたうえで、しかるべき「リーダー」を配置して“予算”を与えて
  「人事を含めた大幅な権限」を与え支援することです。

  すべては「トップマネジメント」のセンスにかかっていることで、
  経営者の方には、倒産の夢を見てうなされて思わず目覚めることも多いそう
  なおですが、柳井さんは別の意味で夢について語っています。
  「夢に生きなければいけない。」「人間いつ死ぬかわからない。」「人生は
  夢なの。」と倒産でなく頂点への夢を叶えようとしているようです。

  今回は断定的で軽いのですが、そんな風もあるのかと軽くお聞き流し下さい。