すべては“経営者”から 168
<すべては“経営者”から >
1.トップマネジメントしての本田宗一郎さん
本田さんは無類の「遊び好き」でした。
ただ幸運だったのは、それと同じかそれ以上に「仕事好き」だったことです。
あるセミナーの依頼を受けたとき、そのセミナーには稲盛和夫さんも参加し
ていたのですが「私はお金が欲しい、何でお金が欲しいのかというと遊びた
いからだ」と言ったというのはおもしろい逸話です。
そんな本田さんは「集中すべき焦点を絞るについての基準」を意識されてい
たのでしょうが、直観の人だったので定かでないのですが、そのことについ
ては結果的にもののみごとに「ドンピシャリ」でした。
・“時至れり”のドメイン(事業領域)
松下さんは、横を通り過ぎる電車を風として“肌に感じ”「電気事業」にか
かわりたいと強烈に思われたそうで、本田さんもはじめて見た「自動車」に
心奪われ排ガスの“においに魅せられて”その後を追い続けたそうです。
御二人とも体感を通して、時代が開けようとしまた求める“未知のなる欲求”
の「ドメイン」にのめり込んで行かれたのです。
・“強み”はこのようにして生まれた
本田さんの“強み”は、
「自動車」が好きで好きでしかなかったことから生まれたもので、
このように言われています「『得手に帆を揚げて』とはよく言ったもので、
得意な道を一生懸命に打ち込んでおりさえすれば、チャンスは必ずある。」
「人生は『得手に帆あげて』生きるのが最上だと信じている。」
もう一つの要因んは、本田さん自身のパーソナリティーで、
「人の真似をするな。何を食ってもいいが、自分のクソをしろ!」
「日本一になるなどと思うな。世界一になるんだ。」
ここで少し主題を別方向から検討します。、
「京セラの稲盛和夫さん」の「人生方程式 人生・仕事の結果=考え方×熱
意×能力」で、そのなかの「能力」について考察してみたいと思います。
本田さんや松下さんや稲盛さんに共通するのは、
「考え方+情熱」でもって「能力」をつくられたということで、その逆「能
力」から「考え方+情熱」は生まれないということです。
ここで結論めくのですが、トップマネジメントに最も求められる“資質”と
“強み”は何か、それは「よき考え方」と「情熱」です。
「よき考え方」と「情熱」があれば「能力」はつくることができます。
また、不得意な「能力」については、他の人に補完してもらえばよく「価値
観」以外のものは誰のものであっても活用すればよいのです。
本田さんは「俺が好きなことばかりやってこれたのも、会社でも家庭でもい
いパートナーがいたからなんだ。」とノロケも交えて言われています。
・本田さんの「価値観」について
「造る喜びとは、技術者にのみ与えられた喜びであって、造物主がその無限
に豊富な創作欲によって宇宙自然の万物を造ったように、技術者がその独自
のアイデアによって文化社会に貢献する製品をつくりだすことは何ものにも
えがたい喜びである。しかもその製品が優れたもので社会に歓迎されるとき、
技術者の喜びは絶対無上である。」と言われています。
この「思い(価値観)」から「三つの喜び」の経営理念をつくられました。
<三つの喜び>
買う喜び:Hondaの商品やサービスを通じて、お客様の満足にとどまらない、
共鳴や感動を覚えていただくことです。
売る喜び:価値ある商品と心のこもった応対・サービスで得られたお客様と
の信頼関係により、販売やサービスに携わる人が、誇りと喜びを持つことが
できるということです。
創る喜び:お客様や販売店様に喜んでいただくために、その期待を上回る価
値の高い商品やサービスをつくり出すことです。
「人を動かすことのできる人は、他人の気持ちになれる人である。そのかわ
り、他人の気持ちになれる人というのは自分が悩む。自分が悩んだことのな
い人は、まず人を動かすことはできない。拝む心がなければ人は動かない。
つねに素直に。」と言われています。
この思いは、副社長の藤沢さんと共有するもので、ここから二人の「価値観」
が展開されるのです。
<人間尊重>
自立:自立とは、既成概念にとらわれず自由に発想し、自らの信念にもとづ
き主体性を持って行動し、その結果について責任を持つことです。
平等: 平等とは、お互いに個人の違いを認めあい尊重することです。また、
意欲のある人には個人の属性(国籍、性別、学歴など)にかかわりなく、等
しく機会が与えられることでもあります。
信頼:信頼とは、一人ひとりがお互いを認めあい、足らざるところを補いあ
い、誠意を尽くして自らの役割を果たすことから生まれます。Hondaは、とも
に働く一人ひとりが常にお互いを信頼しあえる関係でありたいと考えます。
またこんなことも言われています。
「これ(クルマ)は、箪笥だの呉服を売るのとは違って、人間の生命に関す
ることなんだから、その点に一番気をつけなければならない。」
2.合理的な経営の本質
日本では馴染みが薄いのですが、アメリカにおいて「20世紀最高の経営者」
と言われている「ジャック・ウェルチ」がこのように言っているのです。
「従業員は価値により、進むべき方向を見定めることができるのである」
「従業員にやる気を起こさせ、組織を活性化させる」そのために「従業員か
らできる限りの知識と創造力を得ることによって、競争力を差別化しようと
している」ついては「積極的に人の話を聞き、議論し、そして最良のアイデ
ィアを見つけだして、それを実行に移していく」としています。
それから企業が共通して勝ち抜く条件として
「従業員一人一人の価値を高めることを、常に考えていなければ成功する望
みはないだろう」とトドメの言葉を言ったのでした。